巌窟王 第23幕 「エドモン・ダンテス」の演出

クライマックスの第23幕における演出・レイアウトが実に見事なのでメモ的に。



「どうか生きてほしい」と願うエデに対し、
「お前の声はもう届かない」と伯爵はキスで別れを告げる。



引き留めようとしたエデとは対象的に、
アルベールはただ友情(あるいは愛)の為に伯爵へキスをする。
伯爵→エデのキスは、「人としての生への決別」を現すものだが、
アルベール→伯爵のキスは、「人としての生への回帰」を訴えるものだ。
王道的な構図の反復だが、大変美しい。





父フェルナンとアルベールに注目。
「生きよう」と言うアルベールと、残ろうとするフェルナンの間を石が隔てている。
結局フェルナンは死を選び、アルベールは生を選ぶわけだが…



アルベールは二人を隔てていた石を越えてフェルナンの方へ駆け出し、
フェルナンとすれ違い、画面の外へ消える。
「父さんも伯爵も理解出来ない」と叫んだアルベールが父を理解し、
「別れ」ではあるが「決別」ではない、というのを視覚的に見せている。





この作品、全体を通して「目」の表情がとても豊かだが、第23幕はそれが特に顕著。
エドモンが怒りや憎しみ、悲しみをないまぜにした涙を流すシーンや、



アルベールの命を握られ正気に戻ったフェルナンの動揺の表情。
第22幕と第23幕では小杉十郎太の演技も相まって、狂気に満ちたフェルナンを堪能出来る。



アルベールの舞台劇めいた動きも必見。




それと気になったのがこの第23幕、やたらと十字架のモチーフが出て来る。



冒頭、フェルナンは十字架を背負い伯爵のもとへやってくる。



互いに斬り合う剣はやはり十字架だし、



胸に突き立てられた剣もまた十字架、



伯爵の前に十字架として立ちはだかるアルベール、



エドモンの死によって地に十字架が刻まれ、



その遺骸に添えられた短剣は墓標としての十字架だ。
ここまでそれほど宗教的なモチーフが出て来なかった気がするので妙に意味深である。
うーん。


8月に出るBD-BOX、絶対欲しいけどキスダムRがあるので先送りだなぁ。



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